むとうゆたかのありがと横丁☆

essayist, copywriter and blog writer. ネコ大好き。カフェ好き。代表ならなんでも好き。フリーランスの、エッセイスト。コピー。仕事の話や私的なメッセージはspontaneusly1969@gmail.comまで。

さんだーすの言葉。

私の視点)バーニー・サンダース
グローバル経済 大多数に役立たぬ、今こそ変革 朝日新聞 2016年7月14日

 実に驚いた。英国の労働者たちが、自分たちや子どもたちを失望させているとして、
欧州連合(EU)とグローバル経済に背を向けた。こうした労働者たちの多くは、英国
内の大金持ちが裕福になるなか、自分たちの生活水準が下がるのを目の当たりにしてき
た。

 苦しんでいるのは、英国人だけではない。世界の経済エリートが築き、維持してきた
グローバル化の進む経済は、世界中で人々を失望させている。信じられないことに、こ
の地球上で最も裕福な62人が、世界の人口の半分の下層の人たちである約36億人の
合計と同じくらいの富を所有している。上位1%の所有する富は、ほかの99%の人た
ちの合計よりも多い。大金持ちは想像を絶するぜいたくを味わっているが、何十億にも
のぼる人々は、悲惨な貧困や失業、そして不十分な医療、教育、住宅、飲み水に耐えて
いる。

     *

 このような世界経済の現状に対する拒絶反応は、米国でも起こりうるのだろうか? 
もちろん起きる。

 私は民主党の大統領候補の指名争いで、米国内の46の州をまわった。そして、政治
やメディアのエスタブリッシュメント(既成勢力)が認識さえしていないような痛まし
い現実を、数多く見聞きした。

 この15年間に米国では、6万カ所近くの工場が閉鎖され、製造業で480万人以上
の高給の職が消えた。このほとんどは、低賃金国に企業の移転を促す破滅的な貿易協定
と関係している。そして実に4700万人近い米国人が、貧困に陥っている。医療保険
に入っていない人は推定で2800万人にのぼり、入っていても不十分な人は数多い。
何百万もの人々が、法外な額の学費ローンに苦しんでいる。たぶん近代史で初めて、い
まの若者世代は親世代よりも低い水準の生活を送るだろう。恐ろしいことに、教育水準
の低い何百万もの米国人が、絶望や麻薬やアルコールに屈して前の世代より寿命が短く
なるだろう。

 一方で、米国ではいまや上位0・1%の人々が、下位90%の人々の合計にほぼ相当
する富を所有している。所得が増えたうちの58%は、上位1%の人々の懐に入る。

 私は大統領選の間、8ドルや9ドルの時給ではやりくりできない労働者、年額9千ド
ルの社会保障で必要な薬を買おうと苦心する退職者や大学の学費を払えない若者たちと
話した。プエルトリコで米国の市民権を持つ人たちも訪れた。ここでは子どもの約58
%が貧困のなかに暮らしていた。

 はっきりさせておこう。グローバル経済は、米国でも世界でも、大多数の人々の役に
立っていない。経済エリートが得をするようにと、彼らが生み出した経済モデルだ。私
たち米国人は、真の変革を起こさなければならない。だが、民衆扇動や、偏狭な考えや
、移民排斥感情による変革は必要ない。これらは、EU離脱キャンペーンでの巧みな言
葉に使われ、(共和党の大統領候補指名が確実な)ドナルド・トランプ氏の訴えの中核
をなすものでもある。

     *

 私たち米国人は、世界中の人々をもっと緊密に結びつけ、極端なナショナリズムを抑
え、戦争が起きる可能性を減らす国際協力を、力強く支援する大統領を求めている。そ
して、民主的な権利を尊重するとともに、ウォール街や製薬会社といった強力な利益団
体だけでなく、労働者の利益も保護する経済を求めて闘う大統領だ。

 そして、いまの「自由貿易」政策を根本から否定し、公正な貿易へと移行すべきだ。
米国人が、時給何セントかにしかならない低賃金国の労働者と競争させられるのは間違
いだ。環太平洋経済連携協定(TPP)を打ち負かさなければならない。持続可能な経
済モデルを構築する貧しい国々に、手を貸す必要がある。

 大企業や富裕層が何兆ドルもの納税を回避する国際スキャンダルには、終止符を打つ
。また、地球規模の気候変動と闘い、化石燃料から世界のエネルギーシステムを移行さ
せることで、世界中に何千万人分もの雇用をつくり出す必要もある。

 世界全体の軍事費を減らし、戦争の要因になる貧困や憎しみ、絶望や無学といったも
のに立ち向かうため、国際的な取り組みを進めるべきだ。英国で離脱派に過半数を与え
たのと同じ力が、米国でトランプ氏を利することにもなるという考えは、民主党に対す
る警鐘だ。英国の離脱派と同じく、当然のことながら米国の何百万もの有権者も、中間
層を破壊しつつある経済的な力に怒りといら立ちを覚えている。

 この極めて重要な瞬間に、民主党と新しい民主党の大統領は、苦労にあえいでいる人
や取り残されてきた人々を支持すると、明確に打ち出すべきだ。ほんのひと握りの億万
長者だけでなく、すべての人々の役に立つような国家経済と世界経済をつくり出さなけ
ればならない。

 (〈C〉2016 THE NEW YORK TIMES)

 (NYタイムズ、6月29日付、抄訳)